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2017年8月8日

本当の「風」が聞けたこと

今は教科書にも載せられ誰もが知っているこの歌、1970年代フォークソングのはしだのりひことシューベルツの名曲です。当時は、学生運動に参加した学生たちが、その集会や帰り道で、また当時の状況を思い起こして口ずさんだ歌なのですが、それが中学や高校の教科書に載るというのも皮肉なものです。そんなテレビでもラジオでも、またコンサートでも幾度となく聞き幾度となく歌った曲で、数々のフォークコンサートや集会に参加したと自称する自分にとっては不思議な話ではありますが、私は「はしだのりひこ」さんが実際にこの歌を歌うのを聞いたことがありませんでした。その後の風の噂では、今は病気に倒れて寝たきりの生活だとか、もう歌えないだとか、良くない話ばかりを聞かされていました。平成29年春、KBS京都65周年のコンサートがあり、そこを訪れた私は、勿論はしださんが出演されるとは事前に聞かされてもおらず、車椅子姿で難病と闘っておられるにもかかわらず突然コンサートに飛び入り参加され、72歳の声で「風」を歌われ、見ていた私も「風」を口ずさみつつ、流れる涙を止める手立てがありませんでした。そういえばその数日前、これも久々に東京のブルーノートを訪ね、86歳のヘレン・メリルさんの日本でのラストコンサートで今やJazzのスタンダードナンバーたる「You'd Be so Nice to Come Home To」を初めて生で聴き、「ニューヨークのため息」と呼ばれた彼女の人生と言うか生き様に言い知れない感動を覚えたばかりでした。
人は生きている限り、必ず歳をとり、老いて行きます。自分もそろそろ50代と呼ばれる年齢から60代という年齢に近づくにつれ、「美しい老い方」というものを意識せざるをえなくなってきた感があります。産婦人科の医師としては、見た目だけではない内面的な充実した年の取り方、この辺りの女性のテーマにも真剣に取り組まねばならない課題を認識させられる今日この頃であります。